国内ミステリー

2007年12月 6日 (木)

親子3代にわたる時代との格闘、佐々木譲「警官の血」

■佐々木譲「警官の血」・・・親子3代にわたる時代との格闘

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 3世代にわたる警官の物語と聞いて頭に浮かぶのは、スチュワート・ウッズの「警察署長」ではないだろうか。
この作品では、血縁のない3人の警察署長を通して、数十人に上る連続殺人事件を縦軸に、横軸にはそれぞれの時代を反映した人種・暴力・政治等の問題を絡め、架空の町デラノを舞台に話は展開する。
 その計算し尽くされた構成や、全篇を貫く緊張感は見事で、20世紀が生んだ 傑作ミステリーの1本として高い評価を得た作品である。

 さて、「警官の血」。タイトル通り、父・子・孫と繋がる警官3代の物語である。
 時は戦後の混乱期、東京下町の駐在所勤務となり、管内で起きた2件の殺人事件を追う中、とある火災の現場から姿を消し、轢死体となって発見される父。学生運動、真っ盛りの季節。不本意ながら公安のスパイとなって赤軍派に潜入、このことが彼の精神を痛め、後に念願の、父と同じ駐在所勤務となるも不可解な殉職を遂げる息子。

 そして現代、銃器や覚醒剤の密売など暴力団の動向を内偵中、本庁の汚染された上司の摘発に奔走する孫。やがて彼は、祖父が追っていた殺人事件から、祖父と父の死の真相へと目を向けていく・・・。
 時代を濃密に反映した3人の人生模様は、それぞれに際立った世界を活写し、読み応え充分である。
 しかし、是非はともかく、緊密な連携はなく独立的である。
では、時代を串刺しにする<謎>はどうか・・・?
 これも又、浮かんでは消え、消えては浮かぶ程度で、全篇を通しての強烈なクエスチョンとしては読者の前に立ちはだからない。つまりこの作品では、<謎>は各時代をゆるやかに結ぶ手立てに過ぎず、むしろ主眼は、3人の時代との格闘とでも言うべき点に置かれているように思われる。
 そうであるならば、比較的早い段階で透けて見える犯人像も、終盤におけるやや駆け足気味の解決も、そう気にはならないのである。
 いずれにしろ上下2巻の分厚さが、読むにうれしい力作であることに異論はない。

 2007.12.06/・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<ライター/紀尾井町>

――――<参考>――――――――――――――――――――――――
★『ミステリが読みたい2008年版』★ミステリマガジン編集部編<早川書房>
【日本部門2007】
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1.樂園(上・下)/宮部みゆき/文藝春秋
2.赤朽葉家の伝説/桜庭一樹/東京創元社
3.首無の如き祟るもの/三津田信三/原書房
4.離れた家/山沢晴雄/日本評論社
5.サクリファイス/近藤忠恵/評論社
6.果断 隠蔽捜査2/今野 敏/新潮社
7.悪人/吉田修一/朝日新聞社
7.ノーフォールト/岡井 崇/早川書房
9.X橋付近/高城 城/荒蝦夷
9.密室キングダム/柄刀 一/光文社

★『このミステリーがすごい!2008年版』★20周年記念<宝島社>
【2007国内BEST10】
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1.警官の血(上・下)/佐々木 譲/新潮社
2.赤朽葉家の伝説/桜庭一樹/東京創元社
3.女王国の城/有栖川有栖/東京創元社
4.果断 隠蔽捜査2/今野 敏/新潮社
5.首無の如き祟るもの/三津田信三/原書房
6.離れた家/山沢晴雄/日本評論社
7.サクリファイス/近藤忠恵/評論社
8.樂園(上下)/宮部みゆき/文藝春秋
9.夕陽はかえる/霞 流一/早川書房
10.X橋付近/高城 城/荒蝦夷
10.インシテミル/米澤穂信/文藝春秋

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